1.能力 × 意欲 × 価値観で人は力を発揮する

1)人が成果を生み出す「力」の構造

人が仕事で成果を生み出す力(ポテンシャル)は「能力 × 意欲 × 価値観」の掛け算で決まります。

  • 能力(スキル)は成果を生む動力(エンジン、モーター)
  • 意欲(モチベーション)は動力を生む燃料(ガソリン、電気)
  • 価値観(基本姿勢)は方向性を決める司令塔(ECUを搭載したシャーシやステアリング)

どれか一つが欠けても力は発揮されません。

能力が高くても意欲がゼロなら成果はゼロ。
意欲があっても価値観が歪んでいれば暴走する。
掛け算であることが本質です。

人の力を引き出して、組織力としても高めていくために、その構造を可視化して見ていきましょう。

2)能力(スキル)は3階層

①専門スキル

  • 職種固有の技術
  • 実務を通じて習得される
  • 要件が比較的明確

②汎用・基幹スキル

どの職種でも必要となる“基礎体力”。
以下の3領域に分かれる。

(対人スキル)

  • コミュニケーション
  • リーダーシップ
  • ホスピタリティなど

(対課題スキル)

  • 文書化
  • 概念化
  • 会計・ITリテラシー
  • 問題解決
  • 意思決定など

(対自己スキル)

  • セルフマネジメント
  • 教養
  • 知的好奇心
  • 学習習慣など

③複合・発展スキル

  • 経営における独創力、創造力
  • イノベーションの創出
  • 新たな価値を生み出す能力

専門スキルと基幹スキルが土台となって成立する

3)能力を支える「価値観・基本姿勢」

スキルの土台にあるのが価値観である。

  • 公正さ
  • 一貫性
  • メタ視点
  • 誠実さ など

価値観は“スキルの使い方”を決める OS のような存在である。

価値観が整っていなければ、能力が高いほど組織に悪影響を与えることすらある。

4)すべての動力源となる「意欲(感情)」

どれだけ能力が高く、しっかりとした価値観を持っていても、やる気が起こらないと行動にはつながらない。人は感情の生き物である。

個人の成績や自分への評価、周囲の環境や人間関係など、要因はさまざま。しかし、最もパフォーマンスに影響を与える

2.育成の原則(能力 → 意欲 → 価値観の順で育つ)

1)スキルを育てる(能力)

  • できることが増える
  • 褒められる
  • 役に立つ
  • 成長を実感する

これにより意欲が自然に高まる。

2)意欲が高まると挑戦が増える(意欲)

  • 自ら学ぶ
  • 自ら動く
  • 自ら改善する

その結果、能力がさらに伸びる。

3)価値観は“目指す背中”と”環境”で育つ(価値観)

  • ロールモデル
  • リーダーの姿勢
  • 日々の行動

価値観は教えるものではなく、時間をかけて形成される。

経営者の価値観も、時間をかけて変化していく。特に創業時は、「自分の力を試したい」「もっと稼ぎたい」など「自分中心」「利己的」な考えが多いのが普通。しかし長年の企業経営の荒波は人間を磨き、様々な気づきを与える。「だれかの役に立つ」幸せに気づいた経営者と組織は強い。
マズローの5段階説に似せた「経営者の自利利他4段階」。あなたは今、どの段階か。

人の力を伸ばすのも「順序」と「技法」がある。相手に興味を持って見つめて、得意を見つけ、伸ばし、「小さな成功体験と失敗からの学び」を繰り返させる。やがて「できた」「楽しい」「次は」と意欲を育てていく。価値観は、互いに学ぶ経過を通じて育てられる。
ほんとうに大切なものは、正しい順序で時間をかけて、ゆっくり育てる。

これは経営者、リーダーの本質的な仕事。従業員は、常にあなたの言動と背中を見つめている。

3.個人の3要素と組織の3要素の対応

個人の「能力・意欲・価値観」は、組織では次の3つに対応する。

  • 能力 → ケイパビリティ(組織能力)
  • 意欲 → モラール(士気)
  • 価値観 → フィロソフィ(哲学)

4.人材育成は「経営の実学」の中心

人材育成は単なる教育や訓練ではなく、組織の未来をつくる“経営そのもの”である。

  • スキルが伸びる
  • 成果が出る
  • 意欲が高まる
  • 挑戦が生まれる
  • 価値観が磨かれる
  • 組織文化が形成される

この循環が回り始めた組織は、自然と強く成長していく。

5.改善・改革、イノベーションは人が生み出す

既存の価値を連続的に発展、進歩させるのが改善、改革。個人と組織でアイデアをすり合わせて実現していく。経験や過去データの豊富さが重要なため、AIのサポートも期待できる。積極的な発言と実行は個人と組織の経験値を豊かにし、スキルアップと組織力向上に貢献する。これを支えるのは経営の仕事である。
対してイノベーションは、これまでの価値を見直し、新しい方向性で非連続的に生み出す。特定の個人の思いつき個人の独創が起点となる。発想の転換が必要。ユニークで採算性など読めない故に「アイデアを発する自由と見守る文化」がないと育たない。経営者こそが、その環境を作りうる。

まとめ

企業は人なり。中小企業こそ埋もれた人の能力をいかに引き出すかが問われています。専門スキル以外も可視化して、求める人材像を明確にしていくことから始めましょう。