一所懸命なのに成果が出ない会議、その正体

「シャンシャン会議」はなぜ起きるのか

よくある相談のひとつが「会議が報告主体で活発な議論が起こらない。シャンシャン会議が多い」というものです。

部門長を集めた会議ともなると、部門横断の課題解決を経営は期待します。しかし実際には、各部門の課題や対策を順番に発表し合い、ほとんど意見交換のないまま「はい次の部門は」と進む会議が少なくありません。参加者は一所懸命であり、手を抜いているわけでもない。これはいったいどういった「問題」なのでしょうか。

会議のあるべき姿とは

会議は目的に応じてさまざまな形があります。少なくとも経営における会議とは、貴重な人材が時間を割いて会する場ですから、必然的に高い成果が求められます。

特に部門長や幹部社員が集まる場では、「全社的課題を発見し、共有し、議論して最適解を見出すこと」が求められます。各部門の「課題の共有」や「最適解の模索」も重要ですが、共有すべきはそこから派生する全社的な問題です。これから起こりうる問題の提起や対策、つまり「これから」「未来」について衆知を集める場が「会議」です。過去の実績や成功事例は報告書を読めばわかりますが、未来は簡単には読めません。

しかしながら多くの企業では、手柄の報告会や業績が振るわない部門のつるし上げになっているケースが後を絶ちません。暗黙のルールとして、参加者は褒められる実績だけを出そうとし、業績の悪い部門からは意見も言い出せない空気が醸成されます。

「あるべき姿」と「実際の姿」との差(ギャップ)が「問題」の定義です。

では、このような問題が発生する原因はなんでしょうか。

「あるべき姿」は明文化され、共有されているか

共有されていない場合がほとんどです。「暗黙の了解」が曲者です。

「経営会議は経営について話す場に決まっているだろ」という声が聞こえてきそうですが、自分の職位から見た「経営の話」がどのレベルを指しているかは、意外にまちまちです。部門長クラスでは共通していても、経営者の考えには及ばないケースも少なくありません。

  • 会議の目的と、参加メンバーの権限・責任は明確になっていますか。
  • 今回の議題とゴールイメージは事前に、あるいは冒頭で共有されていますか。

全社的な視座で議論しろと言われても、専門外の話は切り出しにくいものです。質問しても、専門家の反論に切り込む知識が足りません。そこで重要になるのが「可視化」です。

数値・推移・他との比較で問題の有無や可能性を探る手法は、専門スキルではなく汎用スキルです。流れや経緯をフロー図にして変化点を見る、メリット・デメリットやリスク・可能性をマトリクスで比べる——ホワイトボードの出番です。 ▶ スキルの定義や分類に関してはこちらを参照

会議の運営ルールに「数値や客観データを示して議論すること」「書記以外でも自由にまとめ役を認めること」などを明記することも、会議の活性化には欠かせません。

議長は会議を引っ張るリーダー

実際の運営では、あるべき姿との不足分を埋める行動が求められます。ルールが明文化されていても、人間の習慣や行動は簡単には変わりません。

意見を引き出し、議論を導き、ゴールに向けてリーダーシップを発揮する——いわゆる「ファシリテーション」です。話すことより「話をさせる」、他者を議論に巻き込んで広げていく専門のスキル(手法と経験を積んだ能力)が求められます。

しかし現実は、参加メンバーの中で最も職位が高い人が議長を務めるケースがほとんどです。スキルも考え方もまちまちで、極めて属人的です。

もし参加メンバーにファシリテーションができる人がいなければ、「書記」を参加させましょう。ホワイトボードの前に立ち、意見を可視化しながらメンバーに「考える」行動を促す役目です。

多くの「報告会」や「シャンシャン会議」に共通するのは、配布資料やPC画面を眺めながら順番に発言していくだけの静的な光景です。同じ場にいながら個々に違うものを見て、静かに座っている。意見も口頭だけなので、違いや共通性の把握も難しい。

せっかく貴重な時間を割いて集まる会議は、「ダイナミックなコミュニケーション」の場にすべきです。活発な議論は「同じものを見て、さまざまな意見や新たな事実を積み上げながら」行うものです。議事録はホワイトボードを写真に撮って共有すれば、余計な手間を省いてスピーディに展開できます。

今後幹部として育成したい人材を、ファシリテーターとして経験を積ませましょう。

コラム

IT関連の企業などで、壁一面がホワイトボードを兼ねる会議室が増えています。ちょっとしたMTGスペースには高めのテーブルのみが置かれ、座れないため30分程度のスピーディな会議があちこちで行われています。これはルールの「可視化」です。会議の目的に応じて、やり方や時間まで「見える化」されている——5Sと並ぶ優れた仕組み化の事例だと思います。

ロールモデルは経営者。率先垂範で、幹部の行動と意識変革を促す

現状の会議体をいちど見直してみてください。大きくは「経営会議」「部門会議」が定例・月次で行われ、随時さまざまなミーティングが実施されていると思います。

会議別のルールを定め、フットワークの軽い進行役を指名して、会議を変えていきましょう。経営者自らがファシリテーションを学んで進行を担うのが最善です。経営者の行動はすべて、社内外に向けたメッセージです。

「幹部の意識が変わらない」とぼやく前に、まず自ら行動を変えて「変革のメッセージ」を発しましょう。

人間の性格は変わらなくても、行動は変えられます。ただし行動変革を促すには「理由」と「変えるメリット」が必要です。リーダーが身をもってそれを示すことで、人の行動が変わり、意識が変わり、組織が動き始めます。